日商簿記3級の試験範囲である小口現金と定額資金前渡制度について、ポイントを徹底的に解説していきます。
小口現金とは
企業には、総務部、営業部など多くの部署があり、各部署は、日々、交通費、ハガキ代、切手代、文房具代などを支払っています。
支払った都度、経理部に行き、各部署が立て替えていたお金をもらうのは、手間です。
また、例えば、鉛筆や消しゴムを買った都度、仕訳をするのも手間です。
そこで、各部署の担当者に一定金額のお金を渡しておき、各部署ごとに、交通費、ハガキ代、切手代、文房具代など日々発生する少額な支払いに備えてもらいます。
そのお金のことを小口現金といいます。
定額資金前渡制度
定額資金前渡制度(インプレスト・システム)とは、以下の流れで、小口現金を管理していく方法です。
【1】用途係(小口現金係ともいいます。)に前渡し 会計係(経理部)は、一定期間に必要となるお金を見積もり、前もって、そのお金を用途係(各部署の小口現金の担当者)に渡しておきます。一般的に、小切手を振り出し、用途係が現金に換えます。 |
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【2】日々の支払い 用途係は、会計係(経理部)からもらったお金で、交通費、ハガキ代、切手代、文房具代などを支払っていきます。用途係は、支払った金額・内容等を小口現金出納帳に記帳して、管理していきます。 |
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【3】一定期間に支払った金額等を会計係に報告 一定期間が終了した後に、用途係は、その期間中に支払った金額・内容等を会計係に報告していきます。 |
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【4】会計係は支払った金額と同額の小口現金を用途係に補給 報告を受けた会計係は、報告を受けた金額と同額のお金を渡していき、小口現金を補給していきます。 |
小口現金の処理
【1】小口現金を前渡ししたとき
A商店は、定額資金前渡制度(インプレスト・システム)を採用している。会計係は、小口現金係に対し、500円の小切手を振出して支給した。この仕訳は、以下のとおりです。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
小口現金 | 500 | 当座預金 | 500 |
小口現金係(用途係)に支給したときは、小口現金(資産)が増えたと考えて、借方に記入します。
小切手を振り出していますので、資産である当座預金が減りますので、当座預金を貸方に記入します。
小口現金係に対し、小切手を振出していますので、A商店の資産が減ったわけではありません。単に、当座預金から小口現金に代わっただけです。
【2】小口現金で支払ったとき
小口現金係は、電車代100円を小口現金で支払った。
この取引の仕訳をする必要がありません。
日々の仕訳の手間を省くための制度ですので、小口現金で支払った都度、仕訳をする必要はありません。
【3】報告を受けたとき
会計係は、小口現金係から、電車代100円、文房具代30円、電気代150円、切手代50円、お菓子代20円を小口現金で支払ったとの報告を受けた。この仕訳は、以下のとおりです。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
旅費交通費 | 100 | 小口現金 | 350 |
消耗品費 | 30 | ||
水道光熱費 | 150 | ||
通信費 | 50 | ||
雑費 | 20 |
小口現金で支払ったときは、仕訳をする必要がありませんでしたが、報告を受けたときに仕訳をします。
小口現金で支払っており、資産である小口現金が減りますので、小口現金を貸方に記入します。
内容 | 勘定科目 |
電車代、タクシー代、バス代など | 旅費交通費(費用) |
文房具代、事務用品、コピー用紙代など | 消耗品費(費用) |
電気代、水道代、ガス代など | 水道光熱費(費用) |
切手代、電話代、ネット代など | 通信費(費用) |
お菓子代など上記等に該当しないもの | 雑費(費用) |
【4】小口現金を補給したとき
会計係は、小口現金係に対し、350円の小切手を振出して、小口現金の補給をした。この仕訳は、以下のとおりです。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
小口現金 | 350 | 当座預金 | 350 |
小口現金を補給したときは、資産である小口現金が増えますので、小口現金を借方に記入します。
小切手を振り出していますので、資産である当座預金が減りますので、当座預金を貸方に記入します。
~支払報告と同時に補給をしたとき~
小口現金の補給が、支払報告を受けたとと同時に行われたときは、以下の仕訳となります。なお、取引は、上記と同じと考えてください。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
旅費交通費 | 100 | 当座現金 | 350 |
消耗品費 | 30 | ||
水道光熱費 | 150 | ||
通信費 | 50 | ||
雑費 | 20 |
上記の仕訳は、以下の2つの仕訳を相殺した結果です。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
旅費交通費 | 100 | 小口現金 | 350 |
消耗品費 | 30 | ||
水道光熱費 | 150 | ||
通信費 | 50 | ||
雑費 | 20 | ||
1つ目の仕訳は、報告を受けたときの仕訳です。 | |||
小口現金 | 350 | 当座預金 | 350 |
2つ目の仕訳は、小口現金を補給したときの仕訳です。 1つ目の仕訳と2つ目の仕訳を見ますと、小口現金350円が、貸方にも、借方にもありますよね。ですので、相殺して、小口現金を消しました。 |