日商簿記3級の試験範囲である現金過不足の処理について、ポイントを徹底的に解説していきます。
目次
現金過不足とは
例えば、A商店が、以下の仕訳をしていたとします。
(借方)現金100/資本金100(貸方)
(借方)現金50/売上50(貸方)
この場合、帳簿上の現金は、150円となります。
その後、A商店は、実際に、現金がいくらあるのかを調べたところ、120円しかありませんでした。
実際にある現金の金額(実際有高)と帳簿上の現金の残高(帳簿残高)が一致していません。
一致していないことを現金過不足といいます。
一致していないことが分かったときの処理
帳簿残高>実際有高
A商店の帳簿残高が150円であるのに、実際に現金を調べたところ、120円しかありませんでした。
この場合の仕訳は、以下のとおりです。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
現金過不足 | 30 | 現金 | 30 |
帳簿残高が150円で、実際有高が120円の場合、A商店にある現金は、帳簿残高150円ではなく、実際有高120円ですよね。
ですので、帳簿残高150円を実際有高120円に修正する必要があります。
ですので、現金30円を減らすために、現金30円を貸方に記入します。
では、相手科目は?
A商店が適切に仕訳等をしていれば、帳簿残高と実際有高は、一致するはずで、何かしらのミス等があったので、帳簿残高と実際有高は、一致していないことになります。
ですので、相手科目を特定することができません。
しかし、【?30/現金30】という仕訳をすることができません。
そこで、?部分には、現金過不足が入ることになります。
なお、現金過不足は、資産・負債・純資産・収益・費用のいずれにも該当しません。
帳簿残高<実際有高
A商店の帳簿残高が150円であるのに、実際に現金を調べたところ、180円もありました。
この場合の仕訳は、以下のとおりです。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
現金 | 30 | 現金過不足 | 30 |
帳簿残高が150円で、実際有高が180円の場合、A商店にある現金は、帳簿残高150円ではなく、実際有高180円ですよね。
ですので、帳簿残高150円を実際有高180円に修正する必要があります。
ですので、現金30円を増やすために、現金30円を借方に記入します。
では、相手科目は?
A商店が適切に仕訳等をしていれば、帳簿残高と実際有高は、一致するはずで、何かしらのミス等があったので、帳簿残高と実際有高は、一致していないことになります。
ですので、相手科目を特定することができません。
しかし、【現金30/?30】という仕訳をすることができません。
そこで、?部分には、現金過不足が入ることになります。
一致していない理由が分かったとき
帳簿残高>実際有高
A商店の帳簿残高が150円であるのに、実際に現金を調べたところ、120円しかありませんでした。
この場合の仕訳は、以下のとおりです。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
現金過不足 | 30 | 現金 | 30 |
ここまでは、上で見てきたとおりです。
その後、A商店は、一致していない原因を調べ、「電話代30円を現金で支払っていたのに、記帳してなかったこと」が判明した。
つまり、本来なら、【通信費30/現金30】と仕訳をするところ、仕訳をしていなかったのです。
A商店は、上記の仕訳【現金過不足30/現金30】をしていますが、通信費(費用)を計上していないので、通信費を計上する必要があります。
ですので、A商店は、以下の仕訳をする必要があります。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
通信費 | 30 | 現金過不足 | 30 |
帳簿残高と実際有高とが一致していない理由が判明したときは、現金過不足から「その理由に該当する勘定科目(上記の場合ですと、電話代の記帳漏れでしたので、電話代の勘定科目である通信費)」に振り替える必要があります。
帳簿残高<実際有高
A商店の帳簿残高が150円であるのに、実際に現金を調べたところ、180円もありました。
この場合の仕訳は、以下のとおりです。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
現金 | 30 | 現金過不足 | 30 |
ここまでは、上で見てきたとおりです。
その後、A商店は、一致していない原因を調べ、「売掛金30円を現金で回収していたのに、記帳してなかったこと」が判明した。
つまり、本来なら、【現金30/売掛金30】と仕訳をするところ、仕訳をしていなかったのです。
A商店は、上記の仕訳【現金30/現金過不足30】をしていますが、売掛金を減らす処理をしていないので、売掛金を減らす処理をする必要があります。
ですので、A商店は、以下の仕訳をする必要があります。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
現金過不足 | 30 | 売掛金 | 30 |
帳簿残高と実際有高とが一致していない理由が判明したときは、現金過不足から「その理由に該当する勘定科目(上記の場合ですと、売掛金回収の記帳漏れでしたので、売掛金)」に振り替える必要があります。
決算日において一致していない理由が判明しないとき
帳簿残高>実際有高
A商店の帳簿残高が150円であるのに、実際に現金を調べたところ、120円しかありませんでした。
この場合の仕訳は、以下のとおりです。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
現金過不足 | 30 | 現金 | 30 |
上記の仕訳をした以後、A商店は、一致していない原因を調べたのですが、一致していない理由が決算日においても判明しませんでした。
この場合、資産・負債・純資産・収益・費用のいずれにも該当しない現金過不足を残しておくことはできません。つまり、現金過不足を消す処理をする必要があります。
そこで、A商店は、以下の仕訳(決算整理仕訳)をする必要があります。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
雑損 | 30 | 現金過不足 | 30 |
帳簿残高>実際有高の場合で、一致していない理由が決算日においても判明しないときは、現金過不足を雑損(費用)に振り替えます。
帳簿残高<実際有高
A商店の帳簿残高が150円であるのに、実際に現金を調べたところ、180円もありました。
この場合の仕訳は、以下のとおりです。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
現金 | 30 | 現金過不足 | 30 |
上記の仕訳をした以後、A商店は、一致していない原因を調べたのですが、一致していない理由が決算日においても判明しませんでした。
この場合、資産・負債・純資産・収益・費用のいずれにも該当しない現金過不足を残しておくことはできません。つまり、現金過不足を消す処理をする必要があります。
そこで、A商店は、以下の仕訳(決算整理仕訳)をする必要があります。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
現金過不足 | 30 | 雑益 | 30 |
帳簿残高<実際有高の場合で、一致していない理由が決算日においても判明しないときは、現金過不足を雑益(収益)に振り替えます。